タイに移住した50代の夫婦です。バンコクでの生活も3年目で間もなく4年目になりますが、タイで暮らしていると、日本との違いを感じる場面がたくさんあります。
施設利用や交通ルール、接客など、挙げればきりがありません。でも、それらを「日本と違うからダメだ」と思うことはあまりありませんし、「そういう文化なんだな」と思えば腹も立ちません。むしろタイらしさとして楽しんでいます。
今回は、私たちが住んでいるコンドミニアムで出会った、一人の清掃スタッフについて書いてみたいと思います。
ジムで見かける、よく働く女性スタッフ
私たちが住んでいるバンコクのコンドミニアムは、共用施設がとても充実しています。
ジムやプール、ラウンジなどがあり、その広い施設を毎日多くのスタッフが清掃・管理してくれています。
私たちは2日に1回くらいジムへ通っていますが、いつも気になる女性スタッフがいます。
年齢はおそらく20代でしょうか。この女性が、とにかくよく働くのです。
床を掃除するだけではありません。トレーニングマシンも一台ずつ丁寧に拭き上げ、細かな汚れまで見逃しません。少しでも気になるところがあれば、その場で掃除を始めます。
休憩している姿など見たことがありません。もちろん、私が見ていない時間に休憩しているのでしょうが、「あれ、この人いつ休んでいるんだろう?」と思ってしまうくらいです。
以前は、5台並んでいるランニングマシンの位置が少しずれていることが気になったようで、わざわざ男性スタッフを呼び、一台ずつきれいに一直線に並べ直していました。
利用する側からすると、「そこまで気にしてくれるんだ」と感心してしまいます。
自然と私たちも挨拶をするようになり、日本へ一時帰国した時に、お土産として日本のお菓子を渡したところ、とても嬉しそうに受け取ってくれたのが印象に残っています。

タイでは珍しいタイプ
タイに住み始めて丸3年になります。
もちろん全員ではありませんが、私がこれまで見てきた範囲では、タイは日本よりも働き方がおおらかな国だと感じています。勤務中でも普通に休憩をしたり、スマートフォンを見たりしているスタッフが多いです。悪い言葉で言えば「適当」「雑」と感じる場面もあります。
でも、それを悪いことだとは思っていません。日本人は真面目すぎると言われることがありますし、タイにはタイの価値観があります。働きすぎないことも、一つの生き方なのだと思っています。
※タイと日本人の働き方の違いを書いた記事です。よろしければご覧ください。

だから私は、日本の基準をタイへ持ち込んで、「もっとしっかり仕事をしてほしい」と思わないようにしていますし、むしろ、そのゆるさに救われることもあります。
だからこそ、この女性スタッフは少し珍しい存在に映るのです。ここまで細かいところまで気を配り、利用者のために一生懸命働く姿は、タイではあまり見かけません。
もちろん、私が見えていないだけで、他にも同じような人はいると思います。
それでも、少なくとも私にとっては、とても印象に残るスタッフです。
少し気になった出来事
そんな女性スタッフを見ていて、少し気になる出来事がありました。
ある日ジムへ行くと、その女性がメンテナンススタッフを呼び、エアコンを指差しながら何かを説明しています。私はタイ語も英語も話せないので、何を言っているのかは分かりません。でも、おそらくエアコンの不具合か何かを見つけて、修理をお願いしていたのだと思います。
ところが、その時の男性スタッフの態度が少し気になりました。もちろん会話の内容は分かりません。あくまで私の想像です。それでも、
「また細かいことを言ってるな。」
「分かった、分かった。あとでやるから。」
そんな雰囲気に見えてしまいました。
もしかしたら、全く違う話をしていただけなのかもしれません。でも、その光景を見た瞬間、私はあることを考えてしまいました。
利用者の立場からすると、この女性がやっていることは本当にありがたいことです。施設を少しでも快適に使えるように、細かなところまで気を配ってくれています。
でも、一緒に働いている人たちは、どう思っているのでしょうか。
「そこまでやる必要ある?」
「また仕事が増えるじゃないか。」
そんなふうに思われていないだろうか。ふと、そんな心配をしてしまいました。
そして、このやり取りを見ているうちに、私自身が会社員として働いていた頃のことを思い出したのです。
日本で働いていた頃
この女性スタッフを見ていて、私が思い出したのは会社員時代のことでした。
私の職場にも、お客様のことを第一に考えて仕事をする人がいました。
「ここも改善した方がいい。」
「お客様のためには、こうした方がいい。」
その人の言っていることは、いつも正論です。上司も納得していますし、お客様にとっても間違いなく良いことです。
でも、その改善には誰かが動かなければなりません。
仕事量がその人だけで完結するなら問題ありません。しかし、一人では抱えきれなくなると、その仕事は周りへ回ってきます。
私自身は決して仕事ができる方ではありませんでした。
だから新しい仕事が増えれば、その分残業をして何とか追いつくしかありません。心の中では「これ以上は勘弁してほしい」と思ったことも何度もあります。
もちろん仕事ですから、必要ならやります。
自分から手を挙げたこともありますし、逆に他の人が指名されて、内心「助かった」と思ったことも正直ありました。
そして年齢を重ねると、今度は仕事をお願いする立場になりました。
これが想像以上につらい仕事でした。
会議で、
「新しい案件が発生しました。誰かお願いできますか。」
そう言っても、手が挙がることはあまりありません。
結局、仕事量や適性を考えながら誰かを指名することになります。内心はどうかわかりませんが大体は素直に受けくれます。しかし、中には
「○○さんの方が仕事に余裕があると思います。」
「それって私の仕事でしょうか。」
そんな言葉を返されたこともありました。
その気持ちはよく分かります。実際、余裕がある人もいました。でも、その人には任せられない理由があるのです。その仕事が苦手だったり、過去に何度も失敗していたり。要は高い確率で、やらかします。そうすると余計面倒になります。
「それって私の仕事でしょうか」という意見もわかります。「それぞれの業務にはある程度関連性」があって、明らかに違う仕事で他の人がやるべき業務という事もわかっています。
でも、「これ以上しょわせたらこの人は病気になりそうと思っているからあなたに振っているんです。」と言いたいですが、当人も会議に出席しているので言えません。
本当に人にお願いするのは嫌でした。私に出来ることであれば、やってしまいたいと思いますが、組織や立場上そういう訳にもいきません。
人に仕事をお願いすることは最後まで好きになれませんでした。
頑張る人ほど損をしてほしくない
だからでしょうか。
ジムで見かけるあの女性スタッフを見ていると、少し心配になってしまいます。
利用者としては、本当にありがたい存在です。
いつも施設をきれいに保ち、少しでも気になることがあればすぐに対応しようとする。こんな人がいてくれるから、気持ちよくジムを利用できています。
でも、その頑張りが職場ではどう受け止められているのでしょうか。
「そこまでやる必要ある?」
「また仕事を増やして……。」
そんなふうに思われていないだろうか。
もちろん、これは私の勝手な想像です。
実際には職場でも信頼され、とても良い関係なのかもしれません。
それなら、それが一番です。
ただ、会社員時代を思い出すと、どうしても余計な心配をしてしまうのです。
利用者にとってありがたいことが、必ずしも職場のみんなにとってありがたいとは限らない。そんな場面を何度も見てきたからです。
だから私は、この女性には無理をしすぎてほしくありません。
少しくらい手を抜いてもいい。
頑張りすぎて辞めてしまうより、長く元気にここで働いてくれた方が、利用者としては何倍もうれしいです。

まとめ
タイで暮らしていると、「日本では考えられないな」と思うことが本当によくあります。
でも、それを日本と比べて優劣を付けることに意味はありません。
タイにはタイの良さがありますし、日本には日本の良さがあります。
今回出会った女性スタッフは、そんなタイの中でも少し珍しい存在なのかもしれません。
だからこそ、つい応援したくなります。
そして、会社員時代を思い出した私は、余計なお世話だと分かりつつも、
「もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかな。」
そんなことを考えてしまいました。
タイの人は働き方が雑だと言ったり、この女性には「もう少し力を抜いてもいい」と言ったり。自分で書いていて、「結局どっちなんだ」と思ってしまいます。
でも、それが私の偽らざる本音です。
タイの大らかさは好きですし、この女性の真面目さも好き。一見矛盾しているようですが、どちらもタイで暮らしているからこそ感じたことなのだと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
タイ移住の様子をブログにしています。よろしければご覧ください。
シンヒロのブログ | ~リタイアメントしてタイ移住をしています~

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